第3章 データが届くしくみ|3-4|コース全体 19回中12本目
ハブ・スイッチ・ルータの違い ― 何を見て転送先を決めるか
見た目や置き場所ではなく「何を見て転送先を決めるか」で機器を区別します。ハブは何も見ず、スイッチはMACアドレス、ルータはIPアドレスを見る。この違いが分かれば、L2・L3という呼び方の意味も同時に理解できます。
機器の違いは「何を見て転送先を決めるか」で決まる
ハブ・スイッチ・ルータは、どれも「データを次に送る」機器という点では同じです。違うのは、転送先を決めるために何を見ているかです。
機器の一覧表
| 機器 | 該当する層 | 見るもの | ふるまい |
|---|---|---|---|
| ハブ(リピータ) | 第1層(物理層) | 何も見ない | 受け取った信号をそのまま、受信したポート以外の全ポートに流す |
| スイッチ(L2スイッチ) | 第2層(データリンク層) | 宛先MACアドレス | MACアドレステーブルを見て、必要なポートだけに転送する |
| ルータ | 第3層(ネットワーク層) | 宛先IPアドレス | 経路表を見て、別のネットワークへ中継する |
| L3スイッチ | 第2層+第3層 | MACアドレスとIPアドレスの両方 | スイッチの速さを保ったまま、ルーティングも行う |
ハブ(リピータ)― 何も見ない
ハブは、受け取った電気信号をそのまま増幅して、受信したポート以外のすべてのポートに流すだけの機器です。 宛先がどこかという情報はいっさい見ません。
宛先を見ないので、本来届ける必要のない相手にもデータが流れてしまい無駄が多く、 複数の機器が同時に送信すると信号がぶつかる(コリジョン)ことも避けられません。 こうした欠点があるため、現在ではほぼ使われておらず、後述するスイッチに置き換わっています。
スイッチ(L2スイッチ)― MACアドレスを見る
スイッチは、MACアドレステーブル(どのMACアドレスがどのポートの先にいるかの対応表)を自分で作り、 必要なポートだけにフレームを転送します。ハブと違い、関係のないポートにはデータを流しません。
MACアドレステーブルはどう作られるか
テーブルは、管理者が設定するものではなく、スイッチが通信を見ながら自動的に学習します。
- 1
フレームを受信する
どこかのポートからEthernetフレームが届く。
- 2
送信元MACアドレスを学習する
送信元MACアドレスと受信したポート番号の組を、MACアドレステーブルに記録する。
- 3
宛先MACアドレスがテーブルにあれば
該当するポートだけにフレームを転送する。
- 4
宛先MACアドレスがテーブルになければ
受信したポート以外の全ポートに転送する(フラッディング)。
ポイントは、学習に使うのが宛先ではなく送信元のMACアドレスだという点です。 「このポートから、このMACアドレスのフレームが送られてきた」という事実から、 「このポートの先に、このMACアドレスの機器がいる」と逆算しています。
たとえば3台のPCがそれぞれポート1・2・3に接続されていて、いずれも一度は送信済みだとすると、 MACアドレステーブルは次のようになります。
| MACアドレス | ポート |
|---|---|
| AA:AA:AA:AA:AA:01 | ポート1 |
| BB:BB:BB:BB:BB:02 | ポート2 |
| CC:CC:CC:CC:CC:03 | ポート3 |
まだ一度も送信していない機器や、初めて受信する宛先はテーブルに載っていません。 その場合はステップ4のとおり、いったん全ポートにフラッディングして相手の応答を待ち、 応答が返ってきた時点でその送信元MACアドレスを学習します。
ルータ ― IPアドレスを見る
ルータは、フレームの中身のIPパケットを見て、宛先IPアドレスをもとに転送先を決めます。 スイッチが同一ネットワーク内での転送を担当するのに対し、ルータは別のネットワークへ中継する役割を持ち、 ネットワークとネットワークの境目に立ちます。
宛先IPアドレスからどの経路で送ればよいかを選ぶ具体的な仕組み(経路表・ルーティング)は、3-3 ルーティングの基本で扱っています。ここでは「ルータはIPアドレスを見て、ネットワークをまたいで中継する機器」 という位置づけを押さえておけば十分です。
L3スイッチ ― スイッチの速さでルーティングもする
L3スイッチは、スイッチとしての高速な転送性能を保ったまま、ルータと同じようにIPアドレスを見て ネットワーク間の中継(ルーティング)も行える機器です。名前のとおり、第2層と第3層の両方を扱います。
では「ルータで十分では」と思うかもしれませんが、両者には次のような違いがあります。
| 項目 | ルータ | L3スイッチ |
|---|---|---|
| 得意な速さ | ソフトウェア処理中心 | ASIC(専用回路)によるワイヤースピード処理 |
| WAN回線への接続 | 得意(多様なWANインタフェースに対応) | 基本的に非対応(Ethernetポートが中心) |
| NAT機能 | 持つことが多い | 持たないことが多い |
| 主な用途 | 拠点間・インターネット接続の境界 | 組織内(LAN内)のネットワーク間ルーティング |
L3スイッチは、社内LANのように組織内で複数のネットワークに分けたセグメント間を高速に中継する場面が得意です。 一方、インターネットとの接続やNATが必要な場面では、いまもルータが使われます。
コリジョンドメインとブロードキャストドメイン
機器の違いは、「どの範囲まで信号が衝突しうるか」「どの範囲までブロードキャストが届くか」という 2つの範囲(ドメイン)にも現れます。
コリジョンドメインは、同時に送信すると信号がぶつかる(コリジョンが起きる)可能性がある範囲です。ブロードキャストドメインは、ブロードキャストフレーム(宛先を全員にした特別なフレーム)が届く範囲です。
| 機器 | コリジョンドメイン | ブロードキャストドメイン |
|---|---|---|
| ハブ | 分割しない(全ポートで1つ) | 分割しない(全ポートで1つ) |
| スイッチ | 分割する(ポートごとに1つ) | 分割しない(全ポートで1つ) |
| ルータ | 分割する(ポートごとに1つ) | 分割する(ポートごとに1つ) |
練習問題(全5問)
選んでから「採点する」を押すと、解説つきで答え合わせができます。
正解:ハブ
ハブ(リピータ)は物理層の中継装置で、宛先を判断する機能を持ちません。受信した信号をそのまま、受信したポート以外の全ポートに流します。
正解:受信したフレームの送信元MACアドレスと、それを受信したポート
スイッチは受信フレームの送信元MACアドレスと、そのフレームが届いたポート番号をセットでMACアドレステーブルに記録します。これを繰り返し、どのMACアドレスがどのポートの先にいるかを学習していきます。
正解:受信したポート以外の全ポートに転送する(フラッディング)
該当するエントリがない場合、スイッチは受信したポート以外の全ポートにフレームを転送します。これをフラッディングと呼びます。相手からの返信をスイッチが受信すると、その送信元MACアドレスが学習され、以降はそのポートだけに転送されるようになります。
正解:L3スイッチはWAN回線への接続機能やNAT機能を持たないことが多く、主に組織内(LAN内)のルーティングに使われる
L3スイッチはスイッチの速さを保ったままルーティングも行えますが、WAN回線への接続機能やNAT機能を持たないことが多く、主に組織内(LAN内)のネットワーク間ルーティングに使われます。WAN接続やNATが必要な場面ではルータが使われます。
正解:スイッチはコリジョンドメインを分割し、ルータはブロードキャストドメインを分割する
スイッチはポートごとにコリジョンドメインを分割しますが、ブロードキャストは全ポートに転送するのでブロードキャストドメインは1つのままです。ルータはポートごとにブロードキャストドメインを分割します(あわせてコリジョンドメインも分割されます)。この対応は試験でもよく問われます。