ネットワークの教科書NETWORK

第3章 データが届くしくみ3-4コース全体 19回中12本目

入門読了 約8分

ハブ・スイッチ・ルータの違い ― 何を見て転送先を決めるか

見た目や置き場所ではなく「何を見て転送先を決めるか」で機器を区別します。ハブは何も見ず、スイッチはMACアドレス、ルータはIPアドレスを見る。この違いが分かれば、L2・L3という呼び方の意味も同時に理解できます。

結論

機器の違いは「何を見て転送先を決めるか」で決まる

ハブ・スイッチ・ルータは、どれも「データを次に送る」機器という点では同じです。違うのは、転送先を決めるために何を見ているかです。

この記事の核心ハブは何も見ない(受信ポート以外の全ポートにそのまま流す)。スイッチはMACアドレスを見る(第2層)。ルータはIPアドレスを見る(第3層)。「L2スイッチ」「L3スイッチ」という呼び名の「L2」「L3」も、 この「どの層の情報を見て転送するか」に由来します。
一覧

機器の一覧表

機器該当する層見るものふるまい
ハブ(リピータ)第1層(物理層)何も見ない受け取った信号をそのまま、受信したポート以外の全ポートに流す
スイッチ(L2スイッチ)第2層(データリンク層)宛先MACアドレスMACアドレステーブルを見て、必要なポートだけに転送する
ルータ第3層(ネットワーク層)宛先IPアドレス経路表を見て、別のネットワークへ中継する
L3スイッチ第2層+第3層MACアドレスとIPアドレスの両方スイッチの速さを保ったまま、ルーティングも行う
第1層

ハブ(リピータ)― 何も見ない

ハブは、受け取った電気信号をそのまま増幅して、受信したポート以外のすべてのポートに流すだけの機器です。 宛先がどこかという情報はいっさい見ません。

宛先を見ないので、本来届ける必要のない相手にもデータが流れてしまい無駄が多く、 複数の機器が同時に送信すると信号がぶつかる(コリジョン)ことも避けられません。 こうした欠点があるため、現在ではほぼ使われておらず、後述するスイッチに置き換わっています。

第2層

スイッチ(L2スイッチ)― MACアドレスを見る

スイッチは、MACアドレステーブル(どのMACアドレスがどのポートの先にいるかの対応表)を自分で作り、 必要なポートだけにフレームを転送します。ハブと違い、関係のないポートにはデータを流しません。

MACアドレステーブルはどう作られるか

テーブルは、管理者が設定するものではなく、スイッチが通信を見ながら自動的に学習します。

  1. 1

    フレームを受信する

    どこかのポートからEthernetフレームが届く。

  2. 2

    送信元MACアドレスを学習する

    送信元MACアドレス受信したポート番号の組を、MACアドレステーブルに記録する。

  3. 3

    宛先MACアドレスがテーブルにあれば

    該当するポートだけにフレームを転送する。

  4. 4

    宛先MACアドレスがテーブルになければ

    受信したポート以外の全ポートに転送する(フラッディング)。

ポイントは、学習に使うのが宛先ではなく送信元のMACアドレスだという点です。 「このポートから、このMACアドレスのフレームが送られてきた」という事実から、 「このポートの先に、このMACアドレスの機器がいる」と逆算しています。

たとえば3台のPCがそれぞれポート1・2・3に接続されていて、いずれも一度は送信済みだとすると、 MACアドレステーブルは次のようになります。

MACアドレスポート
AA:AA:AA:AA:AA:01ポート1
BB:BB:BB:BB:BB:02ポート2
CC:CC:CC:CC:CC:03ポート3

まだ一度も送信していない機器や、初めて受信する宛先はテーブルに載っていません。 その場合はステップ4のとおり、いったん全ポートにフラッディングして相手の応答を待ち、 応答が返ってきた時点でその送信元MACアドレスを学習します。

第3層

ルータ ― IPアドレスを見る

ルータは、フレームの中身のIPパケットを見て、宛先IPアドレスをもとに転送先を決めます。 スイッチが同一ネットワーク内での転送を担当するのに対し、ルータは別のネットワークへ中継する役割を持ち、 ネットワークとネットワークの境目に立ちます。

宛先IPアドレスからどの経路で送ればよいかを選ぶ具体的な仕組み(経路表・ルーティング)は、3-3 ルーティングの基本で扱っています。ここでは「ルータはIPアドレスを見て、ネットワークをまたいで中継する機器」 という位置づけを押さえておけば十分です。

応用

L3スイッチ ― スイッチの速さでルーティングもする

L3スイッチは、スイッチとしての高速な転送性能を保ったまま、ルータと同じようにIPアドレスを見て ネットワーク間の中継(ルーティング)も行える機器です。名前のとおり、第2層と第3層の両方を扱います。

では「ルータで十分では」と思うかもしれませんが、両者には次のような違いがあります。

項目ルータL3スイッチ
得意な速さソフトウェア処理中心ASIC(専用回路)によるワイヤースピード処理
WAN回線への接続得意(多様なWANインタフェースに対応)基本的に非対応(Ethernetポートが中心)
NAT機能持つことが多い持たないことが多い
主な用途拠点間・インターネット接続の境界組織内(LAN内)のネットワーク間ルーティング

L3スイッチは、社内LANのように組織内で複数のネットワークに分けたセグメント間を高速に中継する場面が得意です。 一方、インターネットとの接続やNATが必要な場面では、いまもルータが使われます。

試験頻出

コリジョンドメインとブロードキャストドメイン

機器の違いは、「どの範囲まで信号が衝突しうるか」「どの範囲までブロードキャストが届くか」という 2つの範囲(ドメイン)にも現れます。

コリジョンドメインは、同時に送信すると信号がぶつかる(コリジョンが起きる)可能性がある範囲です。ブロードキャストドメインは、ブロードキャストフレーム(宛先を全員にした特別なフレーム)が届く範囲です。

機器コリジョンドメインブロードキャストドメイン
ハブ分割しない(全ポートで1つ)分割しない(全ポートで1つ)
スイッチ分割する(ポートごとに1つ)分割しない(全ポートで1つ)
ルータ分割する(ポートごとに1つ)分割する(ポートごとに1つ)
試験でよく問われる対応スイッチはコリジョンドメインを分割します(ポートごとに1つ)が、ブロードキャストは全ポートに転送するためブロードキャストドメインは1つのままです。ルータはブロードキャストドメインを分割します (ポートごとに1つ。あわせてコリジョンドメインも分割されます)。「スイッチ=コリジョン」「ルータ=ブロードキャスト」 とセットで覚えると混同しません。
練習

練習問題(全5問)

選んでから「採点する」を押すと、解説つきで答え合わせができます。

Q1ハブ・スイッチ・ルータのうち、宛先の情報をまったく見ずに、受け取った信号を受信ポート以外の全ポートにそのまま流すのはどれ?
Q2スイッチがMACアドレステーブルを作るとき、何をもとに学習する?
Q3スイッチが宛先MACアドレスをMACアドレステーブルに見つけられなかった場合、どうする?
Q4ルータとL3スイッチの違いとして正しいものは?
Q5コリジョンドメインとブロードキャストドメインの分割について、正しい組み合わせは?
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